高齢者における熱中症対策【介護施設・老人ホーム】
熱中症は、従来、高温環境下での労働や運動活動で多く発生していましたが、地球温暖化等による影響により、一般環境における熱ストレスが増大し、最近では日常生活においても発生が増加しています。 体温調節機能が低下している高齢者や、体温調節機能がまだ十分に発達していない小児・幼児は、成人よりも熱中症のリスクが高く、更に注意が必要です。
目次
熱中症とは
熱中症とは、高温環境で、体内の水分や塩分などのバランスが崩れたり、体内の調整機能が破綻するなどして、発症する障害の総称です。重度化すると死に至る可能性のある病態です。予防方法や応急処置を知っておくことが重要です。
熱中症による救急搬送状況
総務省消防庁のデータによると
令和4年5月の全国における熱中症による救急搬送人員は 2,668 人となる。 これは、昨年5月の救急搬送人員 1,626 人と比べると 1,042 人多くなっています。 全国の熱中症による救急搬送状況の年齢区分別内訳は次のとおりです救急搬送人員の年齢区分別では、高齢者(満65歳以上)が最も多く1,380人(5.17%)、次いで成人(満18歳以上満65歳未満)743人(27.8%)、少年(満7歳以上満18歳未満)501人(18.8%)、 乳幼児(生後28日以上満7歳未満)44人(1.6%)の順となっています。
熱中症発生場所別
1.住居 784人(29.4%)
2.道路477人(17.9%)
3.公衆(屋外)416人(15.6%)
4.仕事場292人(11%)
5.教育機関275人(10.3%)
6.公衆(屋内)197人(7.4%)
7.その他227人(8.5%)※上記に該当しない場所
高齢者は熱中症に注意が必要
1.体内の水分が不足しがちです。高齢者は若年者よりも体内の水分量が少ない上、体の老廃物を排出する際にたくさんの尿を必要とします。※高齢者になると、筋肉量が低下し体内に蓄えられる水分量が低下します。
体内の水分量比較
小児:75%
成人:60%
高齢者50%
※水分を効率的に蓄えることができるのが筋肉です。筋肉は保水力が高く極めて効率のよい「貯水タンク」となります。
2.暑さに対する感覚機能が低下しています。加齢により、暑さやのどの渇きに対する感覚が鈍くなります。
3.暑さに対する身体の調整機能が低下します。高齢者は身体に熱がたまりやすく、暑い時には若年者よりも循環器系への負担が大きくなります。
熱中症予防
食事
規則正しい食生活をするとともに、こまめな水分補給をすることが大切です。
【規則正しい食生活をする】
3食(朝食、昼食、夕食)をしっかり食べる(欠食をしない)
主食・主菜・副食を揃えた、偏りのないバランスの良い食事を摂る
十分な休息をとる
【こまめに水分補給する】
のどが渇くまえに水分補給(1日あたり1.2Lが目安)
起床時や、入浴前後にも水分補給
大汗をかいたあとの塩分補給も忘れずに
身体に影響を与えるような暑さの中で失われた水分、電解質を補給する
※一時間ごとにコップ一杯
環境・運動
適切な環境とそれに照らした行動変容に加え、暑さに備えた事前の体づくりが大切です。
室外
炎天下や高温多湿の場での作業や運動は避ける
日傘や帽子の着用、日陰を歩く、こまめな休憩をとる(帽子は時々はずして、汗の蒸発を促す)
※屋外で2m以上離れている時(十分な距離がとれている場合)はマスクを外す。ウイルス感染を十分行ってください。
室内
冷房や扇風機で温度を調節、風通しをよくする、遮光する(ブラインドや簾の利用)
室温をこまめに確認する
衣服
吸汗・速乾素材や通気性のよいもの、ゆったりしたものを着用する
【暑さに備えた体づくり】
暑くなり始めの時期から適度に運動し、体を暑さに慣らす
体を鍛えて、筋肉をつけるようにする
日常での熱中症予防のチェック
□エアコン・扇風機を上手に使用している
□部屋の温湿度を測っている
□部屋の風通しを良くしている
□必要に応じてマスクを外している
□こまめに水分補給をしている
□シャワーやタオルで身体を冷やす
□暑いときは無理をしない
□涼しい服装をしている外出時には日傘や帽子を使用する
□涼しい場所・施設を利用する
□緊急時・困った時の連絡先を確認している
自宅内でも注意し熱中症対策
・エアコンを上手に使用する。身体に直接あたらないように風向きを調整する。
・温度・暑さ指数を確認する
・扇風機や換気扇を併用する。長時間、風が身体に直接あたらないように注意しましょう。
・すだれやカーテンを活用し直射日光は遮る。
・換気をして屋外の涼しい空気を入れる。
・窓とドアなど2カ所を開ける。
まとめ
年々、熱中症発症件数が増加傾向にあります。はじめに述べた通り、地球温暖化の原因もありますが、高齢者の人口も増加傾向にあることもあり、高齢者の身体的特徴を理解しながら環境の整備や見守り体制を構築することで生命の危機を回避できると思います。介護施設(老人ホームやデイサービス)等に従事している方自身も熱中症に注意しながら高齢者の支援に続けていきましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。
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